なぜあの時、彼を呼び止めなかったのだろう。
悔やんでも悔やみきれない。
もう二度と
カレに会えないかもしれないのだから。
その日は雨が降っていた。
私の数歩先を、彼は友人と話しながら歩いていた。
コンビニの入り口でふと足元に目をやると
カレはそこにいた。
“どうしてこんなところにいるんだろ？”
ふいに、そう、思った。
怖いとも、なんだこれは？とも思わなかった。
ずっと前から知っていたような
不思議な感覚だった。初めて会った気がしなかった。
ただ、
水の中にいて苦しくないの？寒くないの？
と、少し心配になったことを覚えている。
カレは
コンビニの前の、旗をさす重し？の中にいて
重しの丸い穴からその姿が見えたのだ。
親指サイズで玉ねぎ頭の、
トイストーリーのミスターポテトヘッドとちびまるこちゃんのながさわくんを足して２で割ったり引いたり足したりしたような顔をしていた。
もちろん、そんな小さいおじさんに会ったのは初めてだった。
なのに不思議と
前から知っているような…
見えていることに違和感はなかった。
でもふと我に返って
えっ！？あなた、誰！？
ってなって
慌てて
数歩先をスタスタと歩いて行ってしまった彼に声をかける
しかし友人と話しているので、
「小さいおじさんがいる！！！」
以外の何物でもない事実を
果たしてなんといって伝えたらよいのかと迷っているうちに
どんどん彼は遠ざかり
「ねぇ・・・」
という私の小さな小さな声は、
雨音にかき消されてしまった。
帰宅して、友人も帰った。
その後は私の逆切れ祭り。
「なんで来てくれなかったの！？小さいおじさんがいたんだよ！？私だけに見えてるのか確かめたかったのに！！！！！もう絶対いないよ！！！もう遅いよ！！！もう手遅れだよ！！あの時来てくれれば、うわーーーー！！！！！大号泣。」
わけもわからず大号泣された彼はとりあえず謝ってくれて
なんだかんだで慰められ
次の日見に行くことにした。
案の定、もう、そこにおじさんの姿はなかった。
泣きべそをかく私。
謝る彼。
なぜだろう・・・もう二度と会えないと、直感的にそう確信した。
と、この一連の流れを
彼は
あの時一緒だった友人に話したそう。
そしたら！！！！！なんと！！！！！！！
その友人もときどき小さいおじさんをみかけるというではないか！！！！
こんなことある！？
あの時ちゃんと呼び止めていれば、
もしかしたら
小さいおじさんの存在証明ができたかもしれないのだ！！！！
小さいおじさんに会えることだけでも稀なのに、
“見える人”と”見える人”が一緒になることって、あるの！？きいたことないぞ！
現に、友人の中で”見える人”はその後も続々と現れ、中には声も聞こえる、毎日見ている、
というつツワモノもいて
結構、見られてる、おじさん。
なんかここまで見られてると、稀じゃない気がしてきた、おじさんに会えること(笑)
でも、じゃあ目撃情報がとても多い小さいおじさん、一体何者なの！？
ってなる。
そこで
中学の時、若い国語の先生が、休み時間に生徒と一緒になってこんな話をしていたことを思い出す。
「宇宙人っていると思う？先生はいると思う。だって宇宙には地球みたいに星がたくさんある。他の星に生物がいないはずがない。宇宙人はいて、きっともう地球にもきてる。ただ、小さすぎて見えないだけなんじゃないかと思うんだ。」
若い+新任教師+男＝女子にチヤホヤされる
若くて男ってだけで女子から黄色い声がかかるその図式が心底嫌いで
若い+男ってだけで当然その先生のことも「ケッ」って思ってた
だからこの話をきいたときも
「何言ってんだコイツ。さすが、頭メルヘンだわ。」
くらいにしか思ってなかった。
けど、今になって急にその話を思い出して
「まさか！？(ﾟдﾟ)！」
って
はっ！！！！！！
としちゃってる自分がいる。（我ながら、頭メルヘン）
んで、「あのおじさん、もしかして、宇宙人！？」
ってなってるからもうその節が有力。
確かその先生が言うには
「見えないくらい小さい宇宙人が、地球を偵察に来てる」
ってことだったと思う！確か！脳内で過去がメルヘンに変換されてるかもだけど！
と、いうことは
ははーん
あのおじさんは地球の偵察に来てたんだ。
だとしたら、
だとしたら、だよ？
っすっげー失敗してるじゃん、オッサン。
だめじゃん、見つかったら。
しかも小さいおじさんって、結構な数、目撃情報あるよ？
簡単に見つかるじゃん、おじさん。
ウォーリーより簡単に見つかってるよ、たぶん。
会話とか、聞かれちゃダメじゃん。
ダメだよ、寝てる大島優子さんの髪の毛とか勝手に三つ編みにしちゃ。
いやわかる、気持ちわかるよ？
可愛いもんね、大島優子さん。
でもさ、小さいおじさんじゃなくても、ダメなヤツだよ、それ。多分犯罪。
寝てる人間の髪を勝手に三つ編みにするとか、詳しくはわかんないけど、たぶん犯罪。
ダメだよ、ハーレーなんか乗っちゃ。
目立ちすぎるでしょ、ハーレーの上の小さいおじさんは。
かっこいいなー乗りたいなー
ってなったんでしょ？それは仕方ないけど
結構見られてんだって。ハーレーはダメだよ。
ハーレーの上に小さいおじさんは二度見確実でしょ。
話題性ありすぎでしょ。ってか、もうここまできたらもはや見つかりにいってるでしょ？
だめじゃーん、向いてないよ、小さいおじさん。宇宙人失格。
なんなら私のほうが、存在消すの得意よ?
「いたの！？気づかなかった！」
と、今まで何度言われたことか。
ともすると、もしかして、
ひょっとすると
私、
宇宙人向いてるかも。
☆今日の1歩☆
小さいおじさん、また会いたいなー。
会える気がしないなー。
なんでだろ？
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