16才の、夏の夜に。

ざっくばらんに。
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あー

こうして人は

ストーカーと化するんだなー。

あれは16の夏、

私はガラにもなく一目惚れ

いや、一聞き惚れをした。

友人に誘われ

ヘコヘコとついて行った部活動で、

ケラケラと甲高い笑い声をきいたその瞬間、

「あー“赤い実はじけたっ!”ってほんとにあるんだなー」

と思った。

あんな感覚は

後にも先にも

あのとき以外に、ない。

その笑い声をきいたその瞬間、

赤い実、はじけた。

声の方に目をやると

そこには、

光浦靖子さんを男の子にしたような男子生徒が立っていた。

見た目がタイプなわけでも

(光浦靖子さんを否定する気はさらさらない)

好みが合うわけでも

(いや、一回も話したことない。それどころか話してるのをみたことも、まだない。)

男に飢えてたわけでも

(むしろ、「男子高校生ってなんでこう、どいつもこいつもギラついてんの?こわっ。」と思ってた)

ないのに、

私は彼を凝視して固まった。

赤い実がパチンっ!と音をたてて弾けるなんて

私の身に起こるはずがないと思ってたから

完全に油断した。

何が起きたのかわからなかった。

それを“恋”だとか呼ぶのも、

私には関係ない話だと思ってるから。

(その当時、友人とやってた交換日記、30すぎてから出てきて読み返したら、そのときのこと「赤い実はじけ祭り」ってかいてた。赤い実はじけ祭り、だったらしいッス。)

そんなわけで、

私の前代未聞の一聞き惚れから始まる恋が、幕を開けた。

そこからというもの、

頭の中は男版光浦靖子でいっぱい。

寝ても覚めてもずっと光浦靖子。

学校にいけば目で追い

光浦靖子は兄と二人で近所に住んでることがわかると、家に押し掛け

光浦靖子の塾の曜日を知ってからは通り道で待ち伏せ。

そんな光浦靖子(紛らわしいので靖男と呼ぶことにする)

実は彼女がいることが判明。

相当落ち込んだ。

私の初めての一聞き惚れの相手には彼女がいる。

でももお、そう簡単に私の頭の中から靖男は追い出せない。

なんてたってはじけ祭りだもん。

はじけて、祭っちゃってるもの。

靖男フェス、開催中だもん。

私の中から靖男がいなくなったら、もう、そこにあるのは“無”だ。

“無”あるのみ。

この先どうやって生きたらいいのかわからない。

(恐るべし。16のはじけ祭り)

なんかもうほんと途方に暮れて

その事実を知った帰り道、

自転車を漕ぐのもおぼつかなく

危うく田んぼに落ちるとこだった。

全身緑色の制服を身にまとった女子高生が

稲の刈おわった田んぼの真ん中に

ママチャリごと放り込まれて

危うくコッチがまつられるとこだった。

彼女がいるからなんだってんだ。

私のほうが靖男のこと好きに決まってる。

(恐るべし。16のはじけ祭り。)

会いたい。会いたい。会いたい。

でも、会ってどうする?いま、靖男、近所のアパートじゃなくて、実家に帰ってるよ?

実家にまではさすがにいけないよ。ご両親と面識ないし。そもそも彼女でもなんでもないし。

彼女なら実家に行ってるかもしれないけど・・・

いや、まてよ?高校生が彼女実家に連れて行くかな?兄と二人で住んでるアパートがあるのに。わざわざ実家まで連れて行かなくない?まだ早くない?ご両親への挨拶は。

てことは、まだ彼女もご両親に会ってなくない?これ、まだチャンスあるんじゃない?(え?なにがなにが?こわいこわいこわい。)

てか、とにかく会いたし!

どうする?会いに行くなら今だよ?今いかないと、終電間に合わないよ?

どうする?どうする?

カンカンカンカン…

って、気づいたら彼の実家の最寄り駅に降り立ってました。

(こっわーーーー!!)

📨

私:いま〇〇駅にいるんだけど

靖男:は?なんで?

私:いや、来ちゃった

いや、もー、リアルメリーさん!!

こーわっ!!!

しかし、メリーさんでは留まらない、はじけ祭りの本当の恐怖はここからだ、、、

靖男:とりあえずいくから待ってて

迎えにきてくれた。やっぱ優しい。好き。

数歩前をスタスタ歩く靖男。

そりゃそうだよね、私と一緒に歩いてるとこ地元の人に見られたりしたら、色々まずいよね。

田舎のウワサは足が速い。

靖男からはぐれないようにしながらも一定の距離をあけ必死についていく。

ある家の前まで来たとき

「ここで待ってて」

靖男は家の中へと消えた。

立派な家だ。呑気にアホ面で見惚れてたら

「そこから来て」

と上から声がした。

えっ?中入っていいの!?と浮かれた私は、0.024秒後には浮かれたことを後悔する。

彼が指差しているのは、塀だ。ブロック塀。

ブロック塀が、そこに立ちはだかっていた。

踏み台や階段は、もちろんない。

そうだよね、塀ってそういうもんだよね。不法侵入とかから守るためだよね、きっと。入る用には作られてない。むしろ、入らないように、そこにある。私みたいなヤツが。

「そこそこ。そこに足かけて」

靖男が、ヒソヒソ声で教えてくれる。

靖男が足をかけろと言っているのは

そお、ブロック塀のあみだくじ部分の、あれだ。ただの線。平面のヤツ。

これ!?

「いいから、早く!!」

あみだくじに足をひっかけ、なんとか塀から頭を出すと

そこには

リビングでくつろぐ男性の姿が。

紛れもなくあれは

光浦パパだ。

どうしよ、どうする、私。

今このタイミングで光浦パパが振り返れば

塀からひょっこり顔を出してる私と

完全に目が合う。

そうなれば

明日私が行くのは

学校ではなく

分厚い塀に囲まれた檻の中だ。

そんなシチュエーションにドキドキしながら

「これが青春か」(絶対違う!!)

とか呑気なこと考えてる。私。

「つかまって!」

上から靖男の声がした。

部屋のベランダからこちらに向けて手を伸ばしている。

その手につかまる。

これが平成のロミジュリ(絶対違う!!)

抱き寄せられて

引き上げられる

これで、彼の上にゴロっと落ちたりして

目の前に彼の顔があって

そのまま、、、

なんて、ときメモハプニングシーンみたいなことには全くならず、

ズリズリズリって

無様な感じで

なんとか靖男の部屋に入り込んだ。

パパにはバレてない。たぶん。

キレイな、整理整頓された部屋。

壁に「努力と忍耐」って習字貼ってある。昭和か。

これが、靖男の部屋か。

部屋に入るなり

「靖男ー」

って、下から女の人の声がした。

一瞬、ヒヤリとする。

「ちょっとまってて」

言うなり靖男は声のするほうに出ていった。

ポツン。

これが靖男の部屋かー

(2回目)

ベッド、ここで康男と彼女は、、

いや、ないない。それはまだない。

むしろ私と靖男が、

ぐへへ。

いや、ぐへへ、じゃねー!!

なんだ、このシチュエーション。

なんで私、靖男の部屋に、ポツン。してんの?

もし今、誰か部屋に入ってきたら

どうする?

靖男の家族や自分の家族、おまわりさんになんて言う?なんて説明すればいい?

「靖男のことが、好きなんです」

あー、

こうして人は

ストーカーと化するんだなー。

いや、ほんと、

誰か来たらやばいよな!?

とりあえず隠れとく!?

隠れ場といえばココ!っていうドラマみたいなクローゼットないし、

あそこのドアがガチャっと開いたとして、

とりあえず死角になりそうな

ここにいよう。

丸見えかな?ワンチャンいけるかな?

にしても、戻ってこないなー靖男。

まだかなー。

………

…………

……………

………………

…………………

っで、朝が来た。

ベッドとカラーボックスの隙間に体育座りのまま、

朝が来た。

靖男が戻ってくることなく、

朝が来た。

そこからどうやって帰ったのか

全く覚えてないけど

(玄関から「お邪魔しましたー」なわけないから、きっとあみだくじを今度はちゃんとスタートからゴールに向かって辿ったのだろう)

気づいたら

何事もなかったかのように学校にいて

何事もなかったような顔して、靖男もいた。

当然だ。

ナニゴトもなかったのだから。

ハプニングもなにもなく

(靖男にとっては終始ハプニング)

無事、日常に帰ってきました。

こうして、

私のはじけ祭りの一夜、

ドキドキハラハラスリリングな大冒険は

「ベッドとカラーボックスの隙間で体育座り、による体のしびれ」以外、何も生み出すことなく幕を閉じた。

そお。何を隠そう、

そのときの靖男が

今の主人だ。

なんて、ロマンチックなエピソードも

当然生み出されてない。

あみだくじ、

完全に

「ハズレ」だったな。

にしても、

おそるべし

16の

はじけ祭り。

☆今日の一歩☆

あー

こうして人は

ストーカーと化するんだなー。

「恋は盲目」って、

盲目すぎて時にこわいよね。

明日もまた、楽しく生きます!!よろしく!

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